着任のご挨拶
今回の燦々カフェブログを担当する、幼児教育学科の橋本です。
上田女子短期大学には、今から2年半前の平成21年11月に赴任しました。
この間、信州大学教育学部との大学連携GPを担当してきましたが、この4月
から、学内の委員会や主要な授業も担当することになり、今回、はじめて、この
燦々カフェブログにも投稿する機会を得ました。よろしくお願いします。
さて、今回は、私の「自己紹介」を、ということなので、先日、授業のオリエ
ンテーションで幼児教育学科の2年生にも紹介した、私の「人生で影響を受けた
映画」をご紹介し、これらの映画との関わりを通じて、自己紹介をしたいと思い
ます。
私の「人生で影響を受けた映画」の一つめは、『依頼人』(監督:ジョエル・
シュマッカー、主演:スーザン・サランドン)という映画です。この映画は、高
校3年の夏休みに入ったばかりの頃にレンタルビデオで観た映画で、当時、進路
がなかなか定まらず、展望を全く見失っていた私にとって、ひとすじの光明が差
したような、一気に視界が開けたような感動を覚えた映画でした。
この『依頼人』という映画は、犯罪を目撃した一人の子どもがマフィアから狙
われ、危険を察知した子どもが、持っていた1ドル紙幣1枚で、スーザン・サラ
ンドン演じる弁護士を雇うことになるという映画です。子どもやその家族は、マ
フィアに命を狙われ、幾度も命を落としそうになりながらも、殺人犯であるマフ
ィアが逮捕されるという結末を迎えます。敏腕なこの弁護士は、犯罪情報と引き
換えに、子どもと母親を安全な地域に移住させるという司法取引を成立させるの
ですが、過酷な環境に置かれた子どもたちが、平穏に暮らす他の一般の子どもと
同じスタートラインに立つためにはどのような公教育の制度的枠組みが必要なの
か、また、この映画の中心となる、法律をめぐる駆け引きの真相を勉強してみた
いと強く思い、大学は、法学部に進学しました(今思えば随分安直な理由だった
と思うのですが、当時は、この映画から、それほど峻烈な印象を受けたものでし
た)。
今年から、短大では、幼児教育学科の「日本国憲法」という授業も担当してい
ますが、このようにして進路が決まったという背景もあって、私が取り組んでき
た研究テーマは、子どもが「自律」した社会の一員となるためにはどのような教
育や制度が必要なのか、また、子どもが社会的な背景に関わらず「自律」できる
ような社会を実現すべく、子どもの権利を保障するために、法(実定法)はどう
解釈されるべきなのか、というようなことを専攻してきました。
これまでは、主に、ヨーロッパの事例を中心に勉強して来ましたが、最近は、
第二次世界大戦直後の1947年教育基本法が成立するまでの過程における南原繁や
田中耕太郎の公民教育に関する議論にも薫陶を受け、能力に比例せず、関心を広
げ、資料の収集や解読に、一層、四苦八苦するようになりました。
ともあれ、この映画が、「法」と「教育」を関連づけて考えるようになった原
点であり、私が関心を持ってきたテーマの端緒とも言えるかも知れません。
一つめの映画は、私の専攻についての自己紹介で、少々硬い話になってしまい
ましたが、二つめの映画は、『冷静と情熱のあいだ』(監督:中江功、主演:竹
野内豊=ケリー・チャン)という映画です。少し前に、辻仁成の作品の中で、私
が一番好きな『サヨナライツカ』という本が映画化されましたが、この映画も、
辻仁成の原作で映画化されたものです(厳密には、江國香織との双作)。
この映画を劇場で観た当時は、私も、まだ20代前半で、今よりも遥かに感性
は豊かだったと思うのですが、この映画の映像の美しさに圧倒され、何度も本を
読み返し、アルバイトをしてお金を貯め、映画に登場する、ローマ、フィレンツ
ェ、ミラノの三つの街を訪ねて歩きました。
映画のシーンを丹念に辿りながら、ガイドブックとイタリア語会話集を片手に、
街中を歩き回り、映画の中心となるフィレンツェのドゥオモには、特に、胸を弾
ませて行ったのですが、当時、この映画の反響は日本国内でも相当に大きかった
ようで、日本人観光客が、入り口から展望台に至るまでびっしりと列をなしてい
たのには、随分とがっかりしたものです。
しかし、これ以降、辻仁成の作品を中心に、小説を読んでは、舞台となった街
を訪ねるというのが一つの趣味になり、今日に至っています。先日、関西に出張
に行った際には、山崎豊子の初期の小説でよく登場する、大阪の「船場」を改め
て歩いて来ました。
関西は、私が学生時代を過ごした場所でもありますが、小説の描写を改めて重
ね合わせてみると、今まで気づかなかったその土地の歴史や文化が改めて察せら
れ、これまで馴染みが薄いように感じていた大阪にも、一気に親近感が湧きまし
た。
さて、今回は、上記のような二つの映画の紹介を通じて、私の専攻と趣味など
について、自己紹介をさせていただきました。当初は、これから上田女子短期大
学で学んでいく皆さんや、これから進学を考えている皆さん等に向け、上田の地
域のことを紹介しようと、「私がお世話になっている上田の皆さん(食生活編)」
という記事を書こうと思っていたのですが、それは次回に繰り越したいと思いま
す。
これからも引き続きよろしくお願いいたします。 (了)