この作品は美術同好会2年の松本成未さんの描きかけの油絵です。どこの美術室にもある石膏とりんごとドライフラワーをモチーフにしていますが、油絵の最も特徴的な透明感を感じさせる色彩感覚あふれる作品になりつつあります。また、なんと言っても基本的な形態がしっかりと把握されています。後少しで完成です。
ところで、総文のある授業で好きな画家のアンケートを取りました。回答で最も多かったのがゴッホでした。ゴッホが好かれるのは、伝道師としての目線での表現内容と狂気とまでなった鋭敏な感覚で捉える自然の表現が理由だと考えられます。しかし、それらの表現を可能にしたのは素描の考え方と油絵の技術でした。素描は物を中心から描くこと(その反対は輪郭から描く)を試みています。内部からの生命のエネルギーを感じるのはそのためです。もう一つは油絵の技法、特に溶剤を研究して輝くばかりの色彩を表現できる技術を身につけました。表現内容とそれを支えた描写の概念と油絵の技術がゴッホの絵に輝く生命感を与えました。
黒澤明の「夢」という短編集の中に日本人の主人公がアルルの丘陵で画材を背負ったゴッホに遇う話があります。ゴッホはスケッチブックを片手に、視線を遠方に向け、描きたい風景を探してあちこちと足早に歩き回りながら、色々質問する主人公には目もくれず力のある声で「私は忙しい、時間がない」というようなことを言いながら丘の向こうに足早に姿を消します。そしてピストルの音・・・・、カラスの鳴き声・・・・。
ゴッホの人生や絵を想うとき、「そんな生き方でいいの?」といつもゴッホから問われているように感じてしまいます。
「笹 井 弘」






